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金井東裏遺跡の地中レーダー探査結果について

金井東裏遺跡の地中レーダー探査結果について

渋川市では榛名山二ツ岳の噴火によって埋没した古墳時代の遺跡に関する情報を広く発信し、火山噴火によって埋没した遺跡がパックされている貴重な環境を多くの方に周知し、活かしていくことを目的に榛名山噴火関連遺跡等活用事業を立ち上げ、活動を推進しています。

この事業の一環として、5ヶ年計画で地中レーダー探査を実施しています。初年度となる令和3年度は、甲を着た古墳人が出土し、世界的な大発見となった金井東裏遺跡の周辺において実施しました。

地中レーダー探査とは

地表を走査するアンテナから地中に向けて電磁波を照射し、地中の反射体からの反射波を捉えることにより、地中の遺構を調査する方法です。地層の境界面や、締め固められた急変面(硬化面)、礫などの遺構の地盤状況が反射体(反射面)となります。

渋川市の環境と地中レーダー探査

渋川市は古墳時代に起こった榛名山二ツ岳の火山噴火による火山噴出物(テフラ)が厚く堆積しています。この火山噴火とは、6世紀中頃の榛名二ツ岳伊香保テフラ(Hr-FP)と6世紀初頭の榛名二ツ岳渋川テフラ(Hr-FA)の2つの噴火で、古墳時代の渋川地域に甚大な被害をもたらしました。一方で、噴火によって一瞬で埋没したことにより、通常の遺跡では風化して残らない畠や水田、道、垣根といった貴重な遺構がそのままの状態でパックされており、こうした遺跡から得られた成果は古墳時代社会の復元に大きく寄与しています。そして、この「テフラによって埋没した状況」は、地中レーダー探査と非常に相性が良く、Hr-FPが厚く堆積している子持地区を中心に、1980年代の後半から積極的に採用され、成果をあげてきました。

令和3年度の地中レーダー探査について

探査の概要

地中レーダー探査は榛名山噴火関連遺跡等活用事業において5ヶ年計画での実施を予定しています。計画の初年度である令和3年度に実施した地中レーダー探査は、金井東裏遺跡の周辺地域で実施し、測線長は合計で1650mです。

測線図

探査の目的

金井東裏遺跡はHr-FAによって被災した「甲を着た古墳人」が暮らしていたと思われる集落遺跡です。そのため、地中レーダー探査の探査対象となるのは、Hr-FA層中およびHr-FA直下面の遺構となります。これまで渋川市で実施してきた地中レーダー探査の対象はHr-FP直下面であり、Hr-FA直下面を対象とした探査は実績が少ないことから、以下の目的を掲げて探査を実施しました。

1、Hr-FAおよびその直下面の検出

2、金井丸山古墳の墳丘形状の把握

3、金井東裏遺跡の広がりの把握

令和3年度地中レーダー探査の結果

金井東裏遺跡9区東側隣接地で、新たに埋没古墳を1基確認しました。また、同9区で確認された畠跡の西側隣接地で畠跡のレーダー反応を、そして同4区の甲を着た古墳人が発見された溝と道の延長部や、竪穴建物と考えられるレーダー反応を捉えることができました。加えて、金井丸山古墳の墳丘形状を把握することができました。

新発見の古墳

金井東裏遺跡9区の東側隣接地で、新発見となる埋没古墳を確認しました。

墳丘規模は直径16~17m、周堀を含めると30mに達すると推定されます。

墳丘形状は円墳で、金井東裏遺跡1号墳と比べてやや大きいようです。

榛名山二ツ岳の火山噴出物によって完全に埋没していると推測され、埋葬施設である主体部も確認されました。

周堀にHr-FAが堆積していることから、おそらく5世紀後半の築造と推測されます。

新発見の古墳平面タイムスライス新発見の古墳平面タイムスライス

畠跡

金井東裏遺跡9区の発掘調査によって確認された畠跡の西側隣接地において、同じ畠跡の延長部と考えられる局所的な凹みのレーダー反応を捉えることができました。

局所的な凹みの反応は、畝とサクで構成される畠のサクの部分と考えられ、一定の間隔でサクが連続する状態が捉えられています。

畠跡平面図畠跡断面

溝状遺構

金井東裏遺跡4区の西側隣接地で、同区の甲を着た古墳人が発見された31号溝と、その溝に近接して確認された4号道の延長部と推定されるレーダー反応を確認しました。9区西側隣接地で確認された畠跡を含め、金井東裏遺跡発掘調査区の西側に集落が広がっていることが明らかとなりました。

道跡と溝平面図道跡と溝平面図

金井丸山古墳

金井丸山古墳は過去に発掘調査が行われ、この時の調査は破壊されるおそれのある主体部を対象とした緊急的なもので、板状の石材を用いた箱式石棺の中から鉄剣3振と馬具が出土しています。墳丘規模や墳丘形状は、榛名山二ツ岳の火山噴出物に埋没しているため不明でしたが、平成24年の金井東裏遺跡の発掘調査による大発見により再び注目を浴びる存在となりました。

探査結果

墳丘規模は直径26m、周堀を含めると35mを超える円墳であることが分かりました。

榛名山二ツ岳の火山噴出物によって埋没しているのは、墳丘の中段以下で、墳丘の上部がすでに削られていると推定されます。

周堀にHr-FAが堆積していることから、おそらく5世紀後半の築造と推測されます。

金井丸山古墳平面図金井東裏断面

金井丸山古墳タイムスライス

まとめ

成果まとめ

令和3年度の地中レーダー探査では、新発見の埋没古墳1基、畠跡、溝状遺構、金井丸山古墳の墳丘規模および墳丘形状を把握することができました。

東側の段丘端部において新たな古墳が見つかり、西側には集落に伴う遺構が続くことが予見される結果が得られたことにより、金井東裏遺跡の広がりを把握するための第一歩を踏み出すことができたと考えています。今後も金井東裏遺跡をはじめとした渋川市の榛名山噴火によって埋没した遺跡の新たな把握のため、引き続き地中レーダー探査を実施していきますので、その成果にご期待ください。

問い合わせ

渋川市教育委員会

教育部文化財保護課

埋蔵文化財係

電話:0279ー52ー2102

E-mail:bunkazai@city.shibukawa.gunma.jp


掲載日 令和4年8月30日 更新日 令和6年9月25日
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教育部 文化財保護課 埋蔵文化財係
住所:
〒377-0062 群馬県渋川市北橘町真壁2372番地1
電話:
0279-52-2102
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0279-52-4008
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